2012.9.20
平成24年8月30日に国税庁は、任意組合等の組合員の所得の計算方法を明示する所得税基本通達36・37供−20を改正しました。今回の改正は所得税に係る通達の改正であり、法人税にも法人税基本通達14−1−1という微妙に言い回しの違う通達があります。
(改正通達は平成24年8月30日以後締結される組合契約から適用されます。)
改正前の両通達は、組合所得等の計算方法として、原則は①総額法で、継続を条件に②中間法、③純額法を認めるといったものでした。微妙に違う箇所は、法人税の通達では、さらに「・・・課税上弊害がない限り」と加えている点でした。
先日改正された所得税の通達では、「①の方法により計算することが困難と認められる場合」を大前提として②③を認めるとされています。継続を条件にしているのは変わらないのですが、両通達の乖離が拡大したことにより税務当局の事務運営ベクトルが明らかになったと感じました。
はっきり言うと所得税は厳しくなったのです。例外である②③の方法を採用することは継続要件さえ満たせばよく、とりわけ③の方法を採用することは、とても簡単なものだったのです。しかし、今回の改正で①の方法による申告を余儀なくされる者が多くなりそうです。①は事務負担が多くなるため個人の納税者には厳しいものになります。
この改正は、ある裁判で税務当局の主張が退けられたことにより、躍起になって改正に動いた節があります。この裁判自体はとてもレアなケースを争ったものでしたので、改正したところで所得税の徴税という点では有効な効果があるように思えませんが・・・。法人と比べ記帳技術に劣るであろう個人に多大な事務負担を与えるというのは行政の在り方として疑問を感じます。「どうしても組合を利用したければ法人を設立して、そちらでどうぞ」という煽動のようにも思えるのですが・・・。なぜならば、税務調査となる個人の割合は少ないですから、法人の方が調査対象に挙がり易いからです。