2012.2.20
先日、ある税理士の方から税務署が確定申告書の受取を拒否したと聞きました。どういうことかといいますと、平成23年分の確定申告からその年中の公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には、確定申告書の提出は不要という制度ができ、この制度が頭にあってその税務署の職員は確定申告書を受け取らなかったということの様です。
しかし、この制度は納税者が申告不要を選択できる制度です。法律上は確定申告義務がある納税者でも、一定の要件に当てはまる納税者は、確定申告書を提出しなくてもよいという条文の構成になっています。税務署の職員がそもそも確定申告義務がある納税者の確定申告書の受取を拒否できるわけではありません。この税務署の職員の勘違いは酷いものです。
ここで、注意していただきたいのですが、上記の年金所得者については、所得税の確定申告書の提出は不要であっても、住民税の申告は必要です。つまり、税務署か市町村役場のどちらかには提出しなければなりません。ですから、確定申告という面倒な手続きから解放されたわけではないのです。
この申告不要を選択した場合、税務署側は国税について取りっぱぐれがないことはわかっており、税務署の職員の事務負担の軽減につながります。これがこの制度を導入した表向きの理由です。その反面、市町村の職員に事務負担を押し付けています。そして、裏では別の効果を期待しているのです。
この申告不要という制度は、多くの高齢者を「申告しなくてもよい♪」と勘違いさせるでしょう。医療費や後期高齢者医療保険料を考慮した医療費控除、社会保険料控除による国税の額の減少機会を、高齢者自らの勘違いにより失いかねません。国側はこの制度による勘違いの誘発を期待しているのです。ホント姑息もいいところです。
(この申告不要を選択した場合には、寡婦控除による国税の減少機会も失います。この点だけは、平成25年分以降から改められます。)
ちなみに「公的年金等の源泉徴収票」には、年末調整が行われた結果の源泉徴収税額が記載されているわけではありません。税理士でも年末調整されていると勘違いしている人がいますw 年末調整は、一定の給与所得者だけに適用される制度です。