2011.9.27
最終的には清算する方向で進んでいるようですが、安愚楽牧場には救済・事業再生型のスキームである事業信託の利用可能性もあったのではないかと思います。事業信託は2007年の信託法改正の目玉でもあったはずですが、現状では事例がほとんどないそうです・・・。
事業信託の一案として、有力牧場を受託者とし受益権を安愚楽牧場(委託者)が取得します。受託者への信託報酬は業績連動型とします。そうすることで高く売れないとされる安愚楽の和牛の肉質改良の可能性もあったし、受益権の部分譲渡により安愚楽牧場の資金繰り改善の可能性もあったはずです。
安愚楽牧場の和牛事業は無視できない規模ですから、この機会に農林水産省がリードして事業信託のモデルケースを作るべきだったのではないかと思うと残念でなりません。
ところで、共同通信の記者さんから安愚楽牧場の財務諸表をみる機会を得ました。安愚楽牧場の体質を垣間見ることができました。
ある期の雑損失の金額が5億円計上されていました。この期の税引後の最終利益が2億円ですから、この雑損失の金額は最終利益に大きなインパクトを与えていることになります。雑損失の内容を知ることはできませんでしたが、内部的にも金融機関等の外部関係者にしても、目をつぶることができる金額ではないはずです。この金額が経常利益の計算に含まれていることにも呆れました。原因を究明して特別損失等に計上すべきです。これだけで推察するには必要不十分と思いつつも、安愚楽牧場は杜撰な体質でしょう。